2016年6月30日(木)18時30分から20時過ぎまで、マーフィー重松スティーヴン(StephenMurphy-Shigematsu)氏をお招きして、「日米の『ダブル』のアイデンティティを生きる」をテーマとした研究会を開催いたしました。
研究会は、次のようなブレインストーミングから始まりました。まず、講師のマーフィー重松氏が「私が日本人かどうか尋ねられることがあります。そこでみなさんは、私が日本人かどうかを尋ねるYes、Noで答えられる簡単な質問をしてください。そして私がYes、Noのどちらを答えた時にみなさんが私を『日本人』と思うか、教えて下さい。」というワークショップです。
● 「温泉は好きですか?」「Yes」「では、日本人です。」
● 「日本国籍を持っていますか?」「Yes」「では、日本人です。」
● 「レストランでは日本語で話しかけられますか、英語ですか?」「たいてい(日本人である)妻に話しかけられるので日本語。」…
● 「オリンピックなどで日本とアメリカが対戦するときにどちらを応援しますか?」「両方」…
● 「日本とアメリカが戦争をした時、アメリカと戦えますか?」「No. 私には人を殺すことはできません。徴兵拒否します。」…
● 「神様でも仏様でも結構ですが、それを信じますか?」「Yes」「では、日本人です。」
次に、このようなやりとりで問われた多くの「日本人の条件」の中で何が重要だと思うかについて、参加者同士が小グループに分かれて議論しました。その議論を通して、国籍のように法律や制度で決まること、アイデンティティ、外見、使用言語や人間関係など、どれをとっても簡単には「○○なら日本人である」ということができないのではないかということを確認しました。
その後、多文化にルーツをもつ「日本人」の方(ミス・ユニバースの日本代表や芸人、スポーツ選手など)を紹介しながら、その人たちについての街頭の声を紹介し、「日本人らしさ」にこだわること、「日本人らしくあれ」とする圧力などについても議論しました。
最後にマーフィー重松氏は、日米の両方のアイデンティティをもって生きることについて話されました。「ハーフ」や「ダブル」という言葉の使い方について、「ハーフ」という呼び方はhalfから来ていて半分を指すので、英語を母語にする人はいやがる。そのために「ダブル」がでてきましたが、doubleも2倍のように量を示す単語なので使いたくない。英語のhalfではなくて日本語の「ハーフ」として使いたい。差別的は表現ではなくて羨む意味さえ含まれているし説明しやすいから、ということでした。これについてはさらに意見交換がありました。
「らしさとは」「複数のアイデンティティを生きるとは」と、深く考えさせられる研究会でした。
(『内なる国際化』プロジェクト運営委員会:柘植あづみ)