内なる国際化プロジェクトに関わった学生・卒業生を紹介する連載の第5回。今回は、本学の「多文化共生ファシリテーター」認証制度誕生後初めて認証を受けたファシリテーター1期生でもある本間優子さん(社会学部・社会福祉学科卒業生)にお話しをうかがいました。入学前から大学在学時代にかけての関心、活動、学びの展開、卒業後に就職先で展開している多文化共生に関わるお仕事、そして将来の夢について語っていただきました。
私の背景から
私が育ったのは、韓国、中国、ネパール、インド、ミャンマーなど、様々な人が住んでいる多国籍の地域でした。公立小学校のクラスメイトには必ず外国人の子がいて、いま思えばミャンマーからの難民の子もいたかもしれません。外国にルーツを持つクラスメイトは、理科や社会の授業を抜けて隣の日本語教室に行くのが当たり前だったし、いろんなスタイルでみんなが自分らしく学んでいる環境でした。様々な国からゲストが来ることも多く、人種や国籍に関してまったく壁を持ちませんでした。しかし、高校の時、悪気はないけれども「外国人」に対して別物扱いしている人を見てとても違和感を持ちました。そこから、「国籍や文化を超えてみんなが自分らしく生きやすい社会になったらいいな」という漠然とした想いをずっと持っています。
明学の社会福祉学科に進学したのは
高校の時に持った違和感とともに、「将来は人に寄り添える仕事がしたい」と思い、社会で様々な難しさを抱えている人に寄り添う社会福祉士を志しました。
国家資格科目の勉強とともに、1年生のときにタイ・フィリピンのフィールドワークプログラム「ASEST」や、国際平和研究所によるフィリピンの貧困調査等に参加しました。「多文化共生ファシリテーター」は、私が興味ある授業をとっていたら、たまたま取得基準に達していたため認証取得しました。
多文化共生ファシリテーター認証のための指定科目で印象に残ってる授業は、「ボランティア実践指導」、「ボランティア学」、「内なる国際化論」の3つです。それぞれの授業では、日本社会や世界で様々な状況に置かれている人々(難民・在日韓国人・児童兵・売春・女性差別など)について教授からの講義を聞くだけでなく、実際に生きづらさを抱える方、またそれを支援する方の生の声を聞く機会が多くありました。特に、様々な視点から多様な知識をインプットするとともに、そこから自分たちに何ができるかを考えるきっかけが多くあったので、社会問題を「自分ごと」として身近に考えることができたのが印象的です。
これらから気づいたのは、「無関心でいることが一番問題である」ということ。私も含めて、どこかで自分と繋がっている問題でも「知らないからしょうがない」と考え、「気づかないふり」をすることが社会の様々な人の生きづらさを引き起こしている原因であり、まずは「いろいろな視点から知る」ということの大切さを学びました。
子どもたちの声を生で聞いて
今でもとてもよく覚えているのが、「外国につながる子どもたちの学習支援教室」に参加してミャンマーからきた小学1年生の女の子に理科を教えてたときのことです。会話の中で将来の夢の話になって、「将来何になりたい?」と聞きました。ケーキ屋さんやお花屋さんなどという答えが返って来るかと思いきや、「お医者さんになりたい。だって、(自分の国には内戦で)怪我をした人がいっぱいいるから、お医者さんになって治してあげたい。」と教えてくれたのです。その答えを聞いたときに、大人になるとなぜか難しくなる、純粋に他の人を思いやれる心に触れ、そして、育った国・環境によって答えがこんなにも違うのかということに気づきました。
難民を生まないということは難しくても、難民の方を受け入れる体制をつくることはできる。先進国の中で難民受け入れ率がとても低い日本で、様々な人がいること、それを尊重し合える環境を創ることができたらいいなという思いが生まれました。
淡路島での生活について
私は、3年前に東京から淡路島に移住し、仕事で淡路島の国際幼児教育プロジェクト(Awaji Kids Garden)の起ち上げを担当しています。淡路島の地方創生と教育格差解消、グローバル人材の育成を目的とし、2~6歳の子どもが、淡路島の自然の中でいろんな文化や価値観、言語に触れることのできる環境を創っています。言語は英語に限らず、日本語でも大丈夫。どんな言葉で話してもいい。英語と日本語とジェスチャーも駆使して、心から外国スタッフとの会話を楽しむ子どもたちの姿を見ていると、本当に、国籍や文化の違いにとらわれない「一人の人間同士の友だちのようなつながり」で、それを尊重し合う大切さを感じています。そして、それとともにこの経験や価値観を持った人が増えれば、お互いに尊重できる人が増えて、簡単に戦争などが起こることもなくなるのではないかと思っています。
また、現在淡路島にてウクライナ避難民の方々への支援体制構築もしています。淡路島というそもそも外国人に対しての受け入れ体制もない土地で、一から、県や市、国際交流協会やNPO法人、大学の方々と連携させていただき、安心安全に住める住まい・仕事・日本語支援・生活支援・彼らが活躍貢献できる場の創出などに携わっています。多様な人がいるほど様々なアイディアが生まれるように、支援体制も様々なセクターと連携することによって、より多様なニーズに対応できるものになると考えています。
大学生活を振り返って
たくさんの出会いとともに、自分の知らない社会や世界を、実体験を通して学べた場所でした。特に、私は在学中に、辛い想いを打ち明けてくれた難民の人やフィリピンの貧困層の方々に出会った経験から、「話してくれた苦労を無駄にしたくない」という強いを抱き、それがいまの仕事や将来の夢にも影響しています。明学は、講義だけでなく様々なプログラムが用意されているので、思い切ってやってみると世界が広がるかもしれません。「なんでもやってみる」、そして「自分の想いを大切にする」。皆さんも、今しかできないこと、今だからこそできることをとりあえずやってみて、そこで抱く想いを大事に周囲に伝え続けていってください。
そしてそのまた先を考える
将来は、日本の多文化共生に貢献していきたいと考えています。国籍や言葉の違いを超えてみんなが自分らしく生きやすい社会。そんな社会に一歩近づけるように、日本にいる在日外国人の支援に携わりたいと思っています。また、青年海外協力隊として1回海外に出て、その国のチカラになりつつ、自分が外国人になる経験もどっぷりしてみたいです。いまにしかできないこと、私だからこそできること、自分の想いを大切にしながら、一歩ずつ進んでいきたいです。